海島遊民くらぶで学ぶ!観光とは何か 研修レポート【後編】
堀口治香
前編では、カヤック体験や海女さんの文化ツアーについてお届けしました。後編では、答志島での体験と、この研修を通じて見えてきた地域観光の目的についてレポートします。
観光は世界平和のため!
3日目の午前中は座学でした。始めに「観光は世界平和のため」という言葉が出てきて驚きました。違う地域の人が交流することで、自分の世界を広げ、寛容を得る、他者を理解するきっかけに観光が重要だというのです。
今まで、何のための観光なのか、という問いを抱いていた研修生もいたので、目から鱗が落ちるような思いでした。
体験を通じて何を学ぶかは委ねられていた今までの研修。その中に、海島遊民くらぶとしてどんな工夫がされていたのかを改めて紐解く座学の時間でした。そして気づけば、それぞれの観光業に携わる思いと、その思いを実現するために何をすればいいのかを具体的に話し合う相談室のようになっていました。海島遊民くらぶの、事業の成功で周りの人々を幸せにしていくという能動的な姿勢を感じ、勇気をもらった気がしました。
出来事の「点」が「面」になる答志島での体験
午後からは「船で行く!漁師町の島ランチツアー」です。観光と地域の方々がどんな風に連携しているのかを知りたい、という希望で組み込んでもらったツアーです。

鳥羽マリンターミナルから市営定期船で約30分。答志島に着くと、まず町の狭い路地をくぐって、地元の方が営んでいる豆腐屋へ。出来立てのがんもを分けてもらって、なんだか得した気分になりながら漁港に向かうと、なんと魚の入札がはじまるところ。漁協のベテラン職員に入札の手順を教えてもらい、デモンストレーションに参加した後、本番の入札を見守ります。


活魚と鮮魚がピカピカ光る中、漁協のスタッフの方の威勢のいい呼び声と共に、あっという間に値段がついて売れていく様に圧倒されます。口調が早すぎて、何を言っているのか素人にはまるで分かりませんでしたが、リズムの良い音楽を聴いているようでした。


隣ではたまたま海苔網を干している漁師さんと出会うなど、身をもって、いかにこの島の漁業が盛んであるかを実感します。この時点で日常とは違う世界に驚きの連続です。

再度路地を抜けていくのですが、その中で、答志島に伝わる伝統のお祭りについて学びます。ガイドさんの説明を聞いて、概要を理解したところで、実際にお祭りのワンシーンを再現してみようと、みんなで扇子やタオルで実演。

お昼は、新しくできた島のお店で、島の豊かな海産物を使った「寝屋子丼」(漬けヒラメと窯上げシラスのどんぶり)をいただきました。

お昼を食べた後は、隣の港、和倶港へと歩きます。道中で所々、人々の暮らしを紹介してくださるガイドさんのおかげで、より島を身近に感じることができます。
和倶港では、「答志島のトロさわら」が水揚げされている現場を見ることができました。脂のノリなど、厳しい基準をクリアした鰆だけが、答志島のトロさわらとして出荷されます。鰆がブランド品になるまでには、漁師さんだけではなく、様々な関係者の協力があったそうです。和倶港から出る市営定期船に乗って、ツアーは終了しました。
ガイドさんの寄り添う力
今回の研修で体験したツアーはどれも、点の出来事が繋がっていき、面となって理解が深まる経験でした。それぞれが独立した出来事ではなく、後々現れる出来事にどんどん繋がって、人々の暮らしと自然資源との共生という、一つの物語を形作っていました。
通常、ガイドさんは案内力、話術などお客様を引っ張るためのスキルが必要とされていますが、今回はリードされたと一切感じることがありませんでした。
資料館での自由時間や、自分の手で色々な体験をさせてもらう、ゆったりした時間の中で、参加者が自分で気づきを得るスタイルと、ゲストのペースに合わせて必要に応じて地域との橋渡し役として対応する――その見事な例を目の当たりにしました。
雲仙というフィールドで
今回の研修は、49時間という限られた時間でしたが、3名それぞれが雲仙という現場に戻り、新たな一歩を踏み出すきっかけとなりました。伊勢志摩で学んだ観光とは何かということを、実践の中でさらに掴んでいきたいと思います。

最後に、、、
研修期間中、海島遊民くらぶの代表である江崎さんが経営する旅館「海月」に宿泊しました。新鮮な海の幸を使った料理の数々、そしてチェックアウト時には手作りのおにぎりが用意されているという心遣い。おもてなしに伊勢志摩の豊かさが相まってとても居心地の良いお宿でした!本当にありがとうございました!!