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小浜温泉まちづくり連載 「火山と海」の恵みとリスク〜安心安全な環境づくりとフェーズフリーへの挑戦〜

瀬戸正志

「地域の観光資源充実のための環境整備推進事業(小浜温泉まちづくり)」の背景にある「3つのリアルな課題」に迫る連載。最終回となる第3回のテーマは、「自然災害リスクへの備えとフェーズフリーへの挑戦」です。

■ 「火山と海」の恵みと、背中合わせのリスク
小浜温泉は、1日に約15,000トンも湧き出る105度の源泉と、目の前に広がる橘湾の豊かな海の幸に恵まれた、まさに「火山と海」の恩恵をダイレクトに受けているまちです。一方で、その豊かな自然環境は時に脅威とも隣り合わせです。 小浜の地下には複数の活断層が存在し、南海トラフ地震等による津波被害の可能性も指摘されています。さらに、現在私たちのまちを守っている防災インフラも年月とともに老朽化が進んでおり、これらを限られた財源の中でどう維持・更新していくかは、地域にとって大きな課題となっています。

■ 「言葉と土地勘の壁」を越えるデジタル避難誘導
さらに、観光地ならではの難しさがあります。それは、有事の際に「土地勘も言葉も通じない訪日外国人観光客を、いかに迅速かつ安全に避難誘導するか」ということです。 「火山=危険」というイメージを払拭し、世界中から選ばれる「日本一安心安全な観光地」を目指すため、今回のプロジェクトでは日本を代表する企業の最新テクノロジーを検討していきます。大成建設株式会社が持つ群集流動解析技術(T-MultiAgent JINRYU)と、株式会社ゼンリンの高精度地図データを掛け合わせ、訪日外国人観光客を含めた精緻な「災害時避難シミュレーション」を検討します。これにより避難時のボトルネックを洗い出し、市の防災ポータルサイト等とも連携した確実な「デジタル避難誘導インフラ」の構築を目指します。

■ 日常と非常時をシームレスに繋ぐ「フェーズフリー」
もうひとつの大きな挑戦が「フェーズフリーという新しい防災コンセプトの導入です。これは、日常時(平時)と非日常時(災害時)の境界を取り払い、普段の生活で便利に使っているものを、そのまま有事に命を守る仕組みへと転換させる考え方です。
その中核となるのが、本田技術研究所が提案する「電気自動車の地域インフラ化」です。平時は、環境に優しいEVをカーシェアとして運用し、観光客の自由な回遊を支える「脱炭素モビリティ」として活躍します。一方で、いざ災害が起きて停電が発生した際には、このEVが「動く蓄電池」へと役割を変え、避難所や再生した分散型ホテル等へと急行し、非常用電源として電力を供給します。 また、川崎重工業株式会社が持つ「浮体式防災拠点(Floating BASE)」のような洋上インフラの知見も、海に面した小浜ならではのフェーズフリーな可能性を秘めています。

■ 「安心」を形にして、未来への投資を呼び込む
どんなに魅力的なまちづくり構想を描いても、自然災害リスクが「投資の不安要素」のままでは、民間投資を十分に引き出すことはできません。そこで、エリア全体を面としてカバーする「地域包括型の補償スキーム」の構築可能性も検証します。リスクを客観的に評価し、確固たる「安心材料」へと変換することで、力強い民間投資を呼び込む仕組みを整えたいと考えています。

■ 3つの課題を乗り越え、自走する小浜へ
全3回でお伝えしてきた「40億円以上の地域消費の喪失」「空き家問題」、そして「自然災害リスク」。これらの課題に対し、行政だけでなく、日本を代表する企業と地元事業者がスクラムを組み、「稼ぎながらまちを守る」というまちづくりがいよいよ本格化します。
次回の連載からは、実際に地域と企業が膝を突き合わせて未来を描く「実践的な活動」などの調査の裏側をお届けしていく予定です。小浜温泉の挑戦に、引き続きご期待ください。

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