小浜温泉まちづくり 海と山の地形を活かす! 「2つの表情と3つの拠点」
瀬戸正志
小浜温泉の将来の姿を見据え、観光庁の環境整備に関する調査事業をひとつの契機としながら、地元の若手経営者や雲仙市、長崎県、㈶ながさき地域政策研究所、雲仙観光局が定期的に机を囲み、まちづくりの議論を重ねています。
この取り組みを進める上で最も大切にしているのは、「観光客向けの整備だけに目を奪われるのではなく、ここに暮らす住民がこれからも安心して豊かに暮らし続けられる生活環境をどう守り、整えるか」という視点です。雲仙市総合計画の策定時に実施された市民アンケート(小浜地区224名回答、うち自由意見154名)を改めて紐解くと、若者が地元に残り暮らしていくための定住環境や雇用の場、自家用車に頼りすぎない公共交通の利便性、そして放課後に子どもたちが安全に遊べる場所を求める切実な声が多数寄せられていました。さらに、海と山が迫る小浜特有の地形から、豪雨時の土砂災害や台風による高潮・浸水など、日々の安全安心に直結する身近な防災への関心も極めて高いことが分かっています。
こうした地域住民のリアルな実感を受け止め、小浜の自然地形と暮らしに素直に根ざした「これからのまちの基本骨格」が整理してみました。

■ 国道251号を境とする「海側」と「山側」の明確な役割分担
小浜の町並みは、背後に迫る急峻な山並みから橘湾の海辺に至るまで、高低差のある限られた平地に形成されています。地形的には「海辺」「温泉街」「山手斜面地」という3つの層で成り立っていますが、まちづくりを実質的に進める上では、町を東西に貫く幹線道路「国道251号」を分かりやすい境界線と捉え、それぞれの特性に応じた役割分担を定めてみました。
• 海側(非日常・交流エリア)
国道251号より海側は、橘湾180度のパノラマと美しい夕日、心地よい潮風を全身で感じられる開放的な空間です。日本一長い足湯「ほっとふっと105」や小浜マリンパークを中心とする公有地が広がるこのゾーンは、観光客を迎える町並みの顔であり、外からの活力を呼び込む場として位置づけることができます。一方で、海岸線や港湾区域には法的な利用制限や防災上の配慮も伴うため、行政と民間が連携しながら、数年単位の時間をかけて段階的に滞在・観光の質を高めていくことを考えています。
• 山側(豊かな日常・生活エリア)
国道251号から山手側へ一歩入ると、立ちのぼる湯けむり、昔ながらの石垣や路地、生活の息づかいが感じられる木造家屋が立ち並ぶ、落ち着いた暮らしの場が広がります。さらに坂を登った標高50mライン付近には、小浜温泉街と橘湾を一望できる素晴らしい見晴らしが存在します。この山側エリアは、住民の日々の安心と居心地の良さを最優先に考えるべきゾーンです。公費を投じる開発を待つのではなく、空き家や未利用の土地を活用し、住民参加を基本としながら「できるところから身の丈に合わせて早く動かす」アプローチを考えています。

■ 歩いて巡れる「3つの重点拠点」と徒歩回遊ルート
海と山が幹線道路で分断されてしまわないよう、両エリアを滑らかにつなぎ、住民も来訪者も心地よく歩いて回れる町を目指して、以下の3つの重点拠点が設定を検討しています。
① 市民交流拠点(公会堂+公園)
山側の中心に位置し、日常のコミュニティ活動や子育て世代の集い、子どもの遊び場を支える憩いの拠点。
② まちなか再生拠点(中通り交差点周辺)
歴史ある温泉街の風情が色濃く残る交差点周辺において、空き店舗や空き家を活かし、官民連携で街並み景観を再生していくモデル拠点。
③ マリンパーク(賑わい核)
橘湾の景観を最大限に活かし、足湯や地元の食、クラフトを通じて地域内外の交流と経済循環を生み出す賑わいの拠点。
これらの拠点を単独で終わらせるのではなく、生活動線でもある「中通り」や「上側通り」を軸に据え、スーパー跡地や歴史資料館、刈水地区へと続く路地をつなぐことで、町全体を心地よく巡れる徒歩回遊ルートを形成していきます。
小浜の豊かな日常を守りながら、外からの活力もバランスよく取り込んでいく——。その第一歩として、次回は3つの拠点の中で最も早く具体的な動きが始まる山側の「市民交流拠点(公園づくりと公会堂の再生)」についてお伝えします。
