小浜温泉まちづくり 地域の誇りを未来の地図に。「橘サンセットエリアをもっと好きになるSTORY」から始まるまちづくり
瀬戸正志
現在、小浜温泉の未来に向けた「地域の観光資源充実のための環境整備推進事業」がスタートしています。全3回の連載で小浜が直面する厳しい課題(地域消費額の喪失、空き家問題、自然災害リスク)をお伝えしてきましたが、今回は、それらの課題を乗り越えるための「最も大切な土台」についてお話しします。

■ 地域の魅力と誇りを言語化した「インタープリテーション全体計画」
地図を広げて橘湾を見ると、北から千々石町、小浜町、南串山町の3つのまちが連なっています。ここには、かつて鉄道が走り、温泉宿が賑わい、豊かな海産物(エタリなど)やミネラル豊富な土壌が育む農産物など、先人が培ってきた歴史と文化が息づいています。
この「他の地域にはない橘湾地区ならではの魅力的なストーリー」を明確化し、地域のブランディングや観光の価値を高めるために、地域住民や事業者の皆様と共に制作したのが「橘サンセットエリアをもっと好きになるSTORY(インタープリテーション全体計画)」です。2024年6月から2025年1月にかけて、地域の皆様と計5回のワークショップを重ね、地域の価値と誇りを丁寧に拾い上げ、一冊の冊子にまとめ上げました。

■ キックオフで伝えた「対話」と「地域の想い」の重要性
去る7月2日に開催されたキックオフミーティングでは、日本を代表する参画企業から、空き家再生やデジタル防災インフラなど、圧倒的なスケールの構想が提案されました。しかし、当観光局から参加者の皆様へ、強くお伝えしたことがあります。
それは、「いきなり実証実験を急いだり、強引に開発を進めたりすることはしない。一番大切なのは地域との対話である」ということです。 キックオフの場でも、この「橘サンセットエリアをもっと好きになるSTORY」について触れました。これは、住民が安心して暮らし続けるための物語を言語化し、観光客が地域を自分事として愛着を持てるエッセンスを詰め込んだものです。大企業の素晴らしい最新技術も、この地域のリアルな想いとズレてしまっては意味がありません。

■ このSTORYをもとに「環境整備事業」を進める意義
では、なぜこのSTORYが本事業においてそれほど重要なのでしょうか。 例えば、増え続ける空き家を「分散型ホテル」に再生する際、ただ新しくて綺麗な部屋を作るだけでは、世界中を旅するお客様の心は動きません。株式会社IFOOが手掛ける空間デザインにも、そして私たちが提供する「地熱ガストロノミー(食体験)」にも、この土地が持つ歴史や文化のSTORYを色濃く反映させる必要があります。
本計画は、いわば地域全体で共有するひとつの「楽譜」です。宿泊施設や飲食店、ガイド、生産者、そして行政など、関わるすべての人々が、それぞれの「自分らしさ」という楽器を持ち寄り、オーケストラのように地域の魅力を立体的に奏でることで、初めて「ここでしか体験できない価値」が生まれます。
地域の皆様の想いから生まれた「橘サンセットエリアのSTORY」を確固たる土台(共通言語)とし、そこに民間投資と最新テクノロジーを掛け合わせていく。これこそが、私たちが目指す「自走する小浜温泉のまちづくり」を成功させる唯一の道なのです。
まずは8月より、地域の若手経営者(OBAMA RISE)の皆様と一緒に、このSTORYをベースにした「実践的アイデア会議」をスタートさせます。地域の誇りを未来の地図にどう描いていくのか、今後の展開にぜひご期待ください!
