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小浜温泉まちづくり連載 「空き家問題」〜増え続ける遊休資産をどうするか〜

瀬戸正志

現在進められている「地域の観光資源充実のための環境整備推進事業(小浜温泉まちづくり)」の出発点となる「3つのリアルな課題」をお伝えする連載。
第2回のテーマは、温泉街の中心市街地で深刻化している「空き家・遊休資産の増加」です。

■ 温泉街の「連続性」を分断する空き家
小浜温泉を歩くと、かつては賑わっていたであろう店舗のシャッターが閉まっていたり、使われなくなった廃業施設や空き家が目につくようになりました。
これらの空き家は、単に「誰も住んでいない建物」というだけではありません。温泉街の賑わいや景観の「連続性」を途切れさせてしまい、エリア全体の魅力や資産価値を低下させてしまう大きな要因となっています。所有者にとっても維持管理が難しく、地域全体にとっても「負債」となってしまっているのが現状です。

■ 取り壊すだけでは、まちは豊かにならない
これまで、こうした空き家問題に対しては「行政の補助金を活用して解体・撤去する」という選択肢が一般的でした。しかし、人口が減少し税収が厳しくなる中で、補助金だけに頼り続けることには限界があります。 また、建物を壊して更地にするだけでは、そこから新たな利益や雇用は生まれず、前回お伝えした「40億円以上の地域消費の喪失」を埋めることはできません。

■ 負債を「稼ぐ拠点」と「自己表現の場」へと変える
そこで今回のプロジェクトでは、この空き家群を「地域全体の資産」と捉え直し、民間投資を呼び込むことで面的に再生する新しいアプローチに挑戦します。
その中核となる構想のひとつが「分散型ホテル(アルベルゴ・ディフーゾ)」です。 これは、大きなホテルを新築するのではなく、温泉街に点在する複数の空き家や空き店舗をリノベーションし、まち全体を「ひとつの大きな宿」に見立てる考え方です。
さらに、小浜温泉には「刈水庵」に代表されるように、デザインや手仕事の力でまちに新たな価値を生み出してきた独自の文化と歴史があります。この系譜を受け継ぎ、改修した空き家を単なる客室にするだけでなく、若手クリエイターやアーティストたちがアトリエやショールームとして活用し、思い思いに自己表現ができる場としても再生していきます。 宿泊客が温泉街の路地を巡りながら、点在するクリエイターの作品や息づかいに直接触れられるような、有機的な空間デザインを目指します。

■ 「分散型ホテル×クリエイターの拠点」がもたらす未来
この取り組みは、単に景観を綺麗にするだけではありません。専門企業のノウハウと民間投資を呼び水として空き家を改修することで、国内外の高付加価値層を惹きつける「稼ぐ拠点」へと生まれ変わります。同時に、新たなクリエイターの移住や交流を促し、まちに新しい文化と活気をもたらすことができます。
空き家が収益を生み、多様な人が集う場になれば、地域の雇用が生まれます。建物の価値が上がることで固定資産税等の税収増につながり、それが私たちの生活インフラを維持する力となります。さらには、生み出された利益が地域外に流出せず、地元に循環し続ける仕組み(地域資産還流モデル)の構築も目指しています。
増え続ける空き家を、ただ嘆くのではなく、まちの未来を拓く希望の種に変えていく。それがこのプロジェクトの大きな柱です。
次回(第3回)は、小浜温泉が抱えるもう一つの側面、「自然災害への備えとフェーズフリーへの挑戦」についてお届けします。

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